長女(16)が太ったことに立腹し、監禁、暴行したとして、大阪府高石市の父親(43)と母親(37)が逮捕された。
父親の体重への過剰な干渉は数年前から始まり、体重を45キロ以下に制限したほか走り込みも強要。「何でこんな扱いをされるのか」。
自宅を飛び出した長女は友人に不満をこぼしたという。近隣住民から「教育熱心」とみられていた家族に何があったのか。
◆15キロランニング
「何で太ったんや、やせとけ」
高石市の閑静な住宅地にある自宅マンション。長女が中高一貫校の中学生だった数年前から、父親の怒号が響き渡るようになった。
「走れ!」。父親の指示で、長女は1日約15キロを走らされることもあった。体重の上限も45キロに設定。
次第に授業についていくことができなくなり、中高一貫校にもかかわらず高校への進学は諦めた。最近は飲食店でアルバイトをするなどして過ごしていたという。
友人らによると、長女はやせ形ではないが、決して太ってはいない。いわゆる「普通の体形」だった。
両親と2人の弟の5人家族で、以前は家族仲は悪くなかったが、父親とのすれ違いは年を重ねるごとに広がっていったとされる。
そんな父親に恐怖を覚えた長女は今年8月、家を飛び出した。行き先は佐賀県にある祖母の自宅だった。
◆1日1食と暴行
「そろそろ帰ってきなさい」。佐賀に「逃亡」した長女に、繰り返し帰宅を求めた両親。だがこの間、長女以外の4人で家族旅行に行っていたことが後の捜査で判明した。
捜査関係者は「長女のことを本心から心配していたら旅行なんてしないはずだ」などと指摘する。
そして10月13日、長女は空路で帰阪した。「今まで何してたんや!」。関西国際空港に迎えに行った父親は車中で長女の顔面などを突然殴りつけた。
暴行は帰宅してからも続き、金属棒を使って複数回殴打。父親はうずくまる長女を6畳の洋室に押し込めた。
洋室は廊下側から鍵が掛けられ、窓も外部から固定されていた。与えられる食事は1日1回。量も少なくダイエットを強要していたとみられる。
トイレと入浴の際は、両親から許可を得ていたという。
監禁から約12日が経過した10月25日、長女は室内にあった釣りざおをドアの隙間に差し込み鍵を解錠。自宅の電話で祖母に助けを求め、事件が発覚。
長女は保護され、大阪府警は11月4日、傷害と監禁の疑いで父親を、傷害幇助(ほうじょ)と監禁の疑いで母親を逮捕した。
◆「娘のために…」
「家出したことに立腹し殴ってしまった。外から鍵を掛けたのは、家出が心配だったから。閉じ込めたのは娘のためだった」
逮捕された父親はこう供述し、暴行や監禁の事実を認めながらも、動機は体重増加とは無関係だと主張した。
母親も監禁容疑を認めながらも「体重が増えただけで、夫が暴力を振るうことはない」と話している。
ただ、捜査では、長女が関空に到着する直前、父親がホームセンターで監禁用の鍵を購入していたことも分かり、計画的犯行だったことも明らかになった。
近隣住民によると、両親はいずれも無職だが、資産家の親族の援助を受けていたとみられる。父親は、「コワモテ風」だったというが、知人らの印象は違っていた。
「確かに子育てには厳しかったが、嫁に出しても恥ずかしくないようにという思いがあったと思う」「とても虐待するようには見えなかった」。一家を知る知人らは口をそろえる。
幼稚園時代から長女に英会話を学ばせるなど、周囲から「教育熱心」とみられていた両親。長女も小学校の卒業文集で心臓外科医になる夢を掲げていた。
「心臓が止まってしまったら、全てが止まってしまう。そんな大切な場所だからこそ、やりがいがあると私は思う」
そう文集でつづっていた長女だが、大学の医学部どころか、高校進学さえ諦めるまで教育環境は変わってしまっていた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151125-00000097-san-soci